これは私の知り合い霊子(仮名)から聞いた話です。
昔から霊が見えるという霊子です。
本当かどうかは私にはわかりません。
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子供のころからおじいさんと住んでいたが、その家に日本人形が飾ってあった。
横にはフランス人形と羽子板もあった。
古い民家なので部屋はふすまのみで仕切られていて、それを開けると広い和室になる作りだった。
自分の部屋が欲しくなった私は、８畳の和室をもうことができた。
その部屋の隣はふすま越しに仏間につながっており、そこの床の間には日本人形があった。
その頃、自分の部屋で寝ていると隣の部屋から「クスクス、ウフフフ」と小さいけれどはっきりした声で笑い声が聞こえて来ることがあった。
そんな不思議なことには、すでに慣れてはいたけどやはり怖かったので、反対側の両親の部屋に逃げ込んだりしていた。
お盆前になると、全てのふすまを外していた。
見渡すと、家族がどこにいるか見える状態。
夜、その状態で寝ていた時、ギューっと金縛りと言うより、上から押さえつけられているような状態で身動きが出来ない状態で目が覚めた。
頭を横に向けられているのに気づき、さらに頭を回され、体ごとうつ伏せになるまで回された。
その時、なぜか日本人形に目が釘付けになった。すると、日本人形の首がぐるりと360度回っていた。
1回転しても止まることなく回り続けた。
こわいこわいと思ったが、気が付くと外が明るくなっていた。時計を見ると5時前だった。
家族はまだ寝ていたが、おじいちゃんだけは台所で何かしていた。
ばたばたとおじいちゃんのところまで行き、叫んだ。
「床の間の日本人形がー」
「ああ、首が回るっちゃろう？」
おじいちゃんの落ち着いた声に、私は「え、そういう仕掛けなん？」と聞いた。
お盆の時期になったら、ご先祖様が帰ってきた印に首が回るのだと言う。
夕べの私の体の状態も、そのせいだと思ったら、少し安心した。
また夜寝てたら、パタパタパタと軽快な足音がしたが、またご先祖様が帰ってきていると思い、怖くなかった。
でも、また体はギューっと押さえつけられ、日本人形の首も回った。
心の中で誰が帰って来たんだろうと思った瞬間、その日本人形の首がニューっと伸びてきてガラスケースを突き抜けた。
顔が目の前まで伸びてきて、瞬きしているように見えた。
そして「お前には関係ない」と言われた。それで、これはご先祖様ではないな、と思った。
「おじいちゃーん、お父さーん」と叫びたかったが、苦しくてうめき声しか出ない。
それが聞こえた上のおねえちゃんが、「どうしたー」と言われたので、「日本人形がー」と叫んだ。
すると、ガラスケースにビリビリとひびが入って割れた。
おじいちゃんもやってきて、それを見ると、「これはご先祖様じゃなかったかもしらんね」と言った。
今起きたことをおじいさんに説明すると、「これはお祓いしないといけないね」と言って、お盆のお経の時に一緒にご祈祷をお願いすると言い出した。
お坊さんが来て、庭先に移動していた日本人形を「あー、うー」と言いながらしげしげと見た後、この日本人形には、身内の霊は一体も入っていなくて、
色々な霊や念がこもっていると説明してくれた。
この日本人形は、この家に入ってくる悪い霊を吸い取ってくれているので、苦しくて首を回しているそうだ。
この人形は守ってくれるから、引っ越しなどするとしても大事に持って行った方が良いと言われた。
なので、ガラスケースを新しくして入れ直し、大事に飾った。
中学になりおじいちゃんを残して私たち家族は引っ越すことになった。そのことを覚えていたので、日本人形も持っていくことにした。
新しい家の床の間に飾った。
すると、夜、階段をツツツと上ってくる音が聞こえた。
ドアを開けてみると、その日本人形がうっすらぼうっと現れていて、「一人じゃ寂しい、みんながいないと寂しい」とい声が聞こえた気がした。
それが10日ほども毎晩現れ、ずっと同じことを言っていた。
おじいさんに電話すると、おじいさんも日本人形が同じことを言う夢を見ていた。
なのでこちらに電話しようと思い、電話の前に来たところだと言われた。
どうりで、呼出音が鳴るとすぐに出たはずだ。
でも、家族はみんなで引っ越ししている。
おじいさんは「もしかしたら、一緒に飾っていたフランス人形と羽子板のことかもしれんね。」と言った。
だが、そんなものを宅配便で送るのも気が引ける。
なので、その夜、またうっすら現れた日本人形に、「今度帰って連れてくるから、待っててね。」と話した。
すると、翌日以降、ぴたりと現れなくなった。
次の休みを利用し、両親が田舎まで行って、フランス人形と羽子板を持ってきた。もちろん日本人形の隣に飾った。
それから日本人形が夜現れることも無いし、おじいさんの夢に現れることもなかった。
しかし、そろった夜から、日本人形の首は時々回っているのを見ることがある。
私は今は結婚してその家には住んでいないが、たまに首が回っていたという話を家族から聞くことがある。
今でも家族を悪い霊から守ってくれているのかもしれないと思った。
